Dairy
« 闘論:外資とどう向き合うか? | メイン | 新党結成で景気に追い風吹くか? »
2008/02/29 金
『企業ファイナンス入門講座』:本日とうとう出版
実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本
保田 隆明 
一部の方々には大変お待たせいたしました。『実況LIVE 企業ファイナンス入門講座』、とうとう本日出版いたしました。書店で平積みされています。370ページある分厚いものなので、すぐに分かると思います。
共著を含め、自身にとって12冊目の刊行となりますが、真正面からコーポレート・ファイナンス、M&Aの分野を解説するテキストはこれが初めてです。2年がかりで「満を持して仕上げた」と言うと大袈裟かもしれませんが、それぐらいの気概で外資系証券会社での実務経験、起業経験、ベンチャーキャピタルファンドの運営経験など今まで培ってきた見識を全て投入しました。
昨年アカデミーヒルズで行ったセミナーをもとにした書籍ですが、あのセミナーの準備にも相当時間をかけましたが、それをブラッシュアップして相当推敲しながら書籍にしましたので、当分野を学びたいビジネスパーソンにきっとご満足いただけると思います。また、金融機関での社員研修用に、そして外資系投資銀行で投資銀行業務に携わる若手社員にも大いに活用してもらえる内容にしたつもりです。
内容は、コーポレート・ファイナンスの各戦略を企業の成長段階別に解説することで、まず企業の経営とファイナンスの関係を概括し、「企業価値評価」「M&Aのプロセス」「資金調達の基本」など、ビジネスの現場で役立つ企業ファイナンスの基本をケーススタディを用いながら分かりやすく解説しました。また近年は企業と市場との対話の重要性が高まっていますが、株主還元政策やIR戦略についても近年の事例を交えて解説してあります。
目次
PART1: Life of a Company 『会社の一生』という考え方
PART2: ベンチャー企業時代の資金調達と想定株価のつけ方
PART3: 株式市場の評価をもとにした企業価値向上経営
PART4: M&Aの実務と企業価値の算出方法
PART5: M&Aの交渉現場
PART6: 資金調達の実践
PART7: 株主還元政策の考え方
PART8: IRを戦略的に活用する
本を書くにあたっては、毎回、相当な時間と根気と気合を入れているわけですが、本書は企画を出してから2年4ヶ月をたってやっと刊行となりましたので、その分感慨もひとしおです。
本書の基となる企画書をダイヤモンド社の石田編集長にお持ちしたのは2005年11月でした。このときはこの企画はいったんペンディングになります。企画書はまだまとまりの悪いもので、いくつかのエッセンスが混ざっていたので、内容を整理する必要がありました。最終的にこの企画書が3冊の本を生むことになります。
まず、その企画の一部を抜粋し大幅に変更する形で、2006年9月に『投資銀行青春白書』を出版します。こちらは同じくダイヤモンド社の加藤さんにご担当いただきましたが、ストーリーもので投資銀行の現場を伝えると同時に、必要最低限のコーポレート・ファイナンスやM&Aを解説するという立ち位置を取りました。
『投資銀行青春白書』は、おかげさまで今でも人気のロングセラー本になりました。定期的に重版がかかっています。もともとはもう少しコーポレート・ファイナンスやM&Aの学習の側面が強かったのですが、さらっと読めることを優先し、解説部分をばっさりと落としたのでした。アマゾンやmixiのレビューでも概ね好評をいただいていますが、「内容が簡単すぎる」という批評があったのもまた事実です。
「そんなの分かっているよ、徐々にレベルアップしたものを書くんだよ!」と自分の中でシャウトして次の本にかかります。次は、最近の株式市場で起こっている話題をわかりやすく解説したいと思い、これまた当初の企画書を一部抜粋し、変更を加えて、『M&A時代 企業価値のホントの考え方』をダイヤモンド社の石田さんにご担当いただき出版しました。企業価値、三角合併、敵対的買収、MBO、コーポレートガバナンスなど、言葉だけは聞いたことがあるけれども、分かったようで分かっていないものを解説しました。
この本に関してはネガティブな批評をいただいたことはほとんどなく、自分でも非常に満足しています。
そして最後に、この分野に関するきちんとしたテキストを出版することになりました。それが今回出版する『実況LIVE 企業ファイナンス入門講座』です。タイトルでお分かりかもしれませんが、ダイヤモンド社から以前出版されている『実況LIVE マーケティング実践講座』のシリーズ本という位置づけです。『実況LIVE マーケティング実践講座』も重版を重ねるロングセラー本ですので、非常に光栄な限りです。
コーポレート・ファイナンスやM&Aを分かりやすく理解してもらうには、まずは物語りや漫画や例え話を用いるのがいいと思い、最初の著書である『図解 株式市場とM&A』では「空のカフェ」の経営者の物語を、『投資銀行青春白書』ではマンハッタン証券のミヤビちゃんの物語を用いましたし、当ブログでM&Aを解説する際はモーニング娘。を活用しました。
しかし、いつかはきちんとした解説書を書こうとは前々からずっと思っていました。今までの物語ものなどは、全てこの解説書を書くまでに必要なステップでした。最初から解説書を書いたのでは意味がなく、徐々に読者の方々のリテラシーの向上につながるような順序で、と思っていました。
コーポレートファイナンス、M&A分野にご興味のある方にとっては、絶対にお薦めの1冊です。思い入れが強い分、長くなりましたが、ご興味ある方は書店でパラパラとご覧になってくださいね。お時間のない忙しいビジネスパーソンの方々は、アマゾンでワンクリックで購入しておいてくださいな。
以下は、ご参考までに、目次詳細全てです。
PART1: Life of a Company [会社の一生]という考え方
~会社のライフステージによって戦略は異なる~
01 誕生─ひたすら生き抜く(目安として設立後5年目まで)
ベンチャーキャピタルとの付き合いから財務戦略が始まる
ベンチャーキャピタルと銀行とのバランスの取れた付き合い
02 成長─ビジネスの拡大(株式上場まで)
株式上場する理由
上場の意味
上場に向けての証券会社の役割
[コラム]企業と証券会社、そして資本市場との関係は?
03 成熟─さらなる成長への資金ニーズ(M&Aや市場での資金調達を活用)
重要になるIR活動:株式市場との対話開始
株式上場とは、株式で「も」資金調達ができること
M&Aに取り組む
04 生き延びる(輪廻転生)
事業売却、MBO
PART2: ベンチャー企業時代の資金調達と想定株価の付け方
~ベンチャー経営者を疑似体験:株式公開までの道のり~
01 未上場企業の資金調達の考え方
2つの資金調達手法 借入金と株式発行
ベンチャーキャピタルなどリスクを取る株主が得られるものとは?
出資金額と持分割合の関係
02 未上場企業の株価はどうやって決めるのか?
過去の投資案件から見るベンチャー企業に適切なPER
ベンチャーキャピタルはベンチャー投資時のPERのデータベースを持っている
赤字企業の場合はどうする?
[コラム]業界平均PERを求める際はどこまでを業界の銘柄として含めるべきなのか?
PER以外でベンチャー企業の想定時価総額を求める方法
実は感覚値が重要なベンチャー企業の時価総額算出
上場時の時価総額はPERで決める
出資時の時価総額が決まって、発行する株数も決まる
[コラム]ベンチャーキャピタルとベンチャー企業経営陣で、株価に合意できない場合はどうするのか?
[コラム]とにかく高い株価を付けて出資を受けることがベンチャー企業経営者にとっては重要ということか?
03 資本政策、株主構成のポイント
上場までの株主構成をどう考えればいいのか(資本政策)
04 投資契約書の主な内容
05 株式分割について
06 ストックオプションとは何か?
ストックオプションは従業員のインセンティブとして発行されることが多い
ストックオプションは費用扱いに
株主構成はストックオプションを含めて考える
ストックオプションは上場直前で株数の10%以内にする
取締役が辞任した場合に備えてのストックオプションの設計
[コラム]ベンチャーキャピタルは何を見て投資の可否を判断するのか?
07 上場時の株価決定
万が一上場できない場合はどうなる?
[コラム]起業の基礎知識
PART3: 株式市場の評価をもとにした企業価値向上経営
~これであなたも立派な経営者!「企業価値」を意識した経営戦略を体得~
01 あなたの会社の株価は高いのか低いのか
PERの概念を損益計算書で確認する
家電業界の株価評価
株価評価に株価チャートは使わないのか?
02 時価総額と企業価値の違いを認識する
PER以外の指標も欲しい
企業価値を評価するには営業利益ベースで考える
03 企業価値の概念と算出のプロセス
企業価値って何だろう?
企業価値算出のロジック
企業と国の違いは? 倒産の可能性を考える
企業の生み出すキャッシュフローは毎年変化する
財務理論上、企業の寿命は永久
企業価値算出の概念は簡単 難しいのは判断
「企業価値を向上させる経営」の意味
さて、企業価値と株主価値、時価総額の関係は?
企業価値評価手法:企業価値とEBITDA倍率
PERとEBITDA倍率で見る市場からの評価
PERとEBITDA倍率の使い分け
特殊要因により株価が高く評価されるケース
市場の評価を経営に生かすには…?
適切な資金調達手法の選択も企業価値に大きく影響する
PART4
M&Aの実務と企業価値の算出方法
~買収案件をどう評価し、どのようなスキームを組み立てるか~
自社の概要を把握する
01 株式市場の評価に耳を傾ける
株価の低迷は市場が経営課題を認識しているというサイン
買収対象企業の分析
M&Aによるメリットの検討
シナジー効果の測定
事業計画の前提となるシナリオを設定する
02 DCF(ディスカウンテッドキャッシュフロー)法による企業価値評価
将来キャッシュフローを算出する
割引率を設定する
株主資本コストの考え方
永続価値の求め方
03 DCF法を用いて実際に企業価値評価を行う
資本コストの算出手順
フリーキャッシュフローの割引現在価値と永続価値の現在価値を求める
悲観的と楽観的2つのシナリオを作る
M&Aで忘れてはならない「のれん」のインパクト
04 買収効果をどのように測るか
株主に評価される買収とは
05 PERやEBITDA倍率(マルチプル)による検証
DCFの妥当性を検討する
06 さまざまな買収ストラクチャーを検討する
子会社化と一体化
株式移転と経営統合
スキームごとのメリットとリスクを考える
07 M&Aのプロセスと外部専門家の利用
[コラム]フェアネスオピニオンについて
08 M&A案件に着手する前に検討すべきこと
[コラム]企業価値評価の手法あれこれ
[コラム]“繰越欠損金の節税効果”に対する誤解
[コラム]相手企業にどうやってアプローチ?
[コラム]リーグテーブルって何?
[コラム]証券会社のM&A手数料ってどうなっているの?
PART5: M&Aの交渉現場
01 入札の流れ
売却の打診から1次入札まで
2次入札までの間のデューデリジェンス
02 1次入札前に用意しておくべきこと
手元資金か、借入か、株式交換か
シナジー効果と評価額
買収資金をどう調達するか
競合入札者の実力は?
03 買収金額は株式市場に受け入れられるか
シナリオ別の評価額の検討
買収後の1株当たり利益の変動をシミュレーションしてみる
04 買収金額の決め方
買収プレミアムの考え方
モンド食品の1次入札額を想定する
05 デューデリジェンスのポイント
専門家の協力を得る
デューデリジェンスのチェックポイント
06 デューデリジェンスのケーススタディ
入札金額を変更すべきかどうか
07 交渉の戦術
売り手は事業会社か投資ファンドか?
入札方式による交渉戦術の違い
08 M&A契約書締結の交渉
表明および保証
損害賠償(補償)
停止条件
売買金額の調整
ブランド名の使用
競業避止義務
09 M&A契約交渉のケーススタディ
10 買収決定後やるべきこと
[コラム]相対取引か入札方式か
PART6: 資金調達の実践
~資金調達手法の選別は企業価値にどう影響するのか~
01 資金調達をする前に考えるべきこと
考えるべき5つのポイント
02 資金調達にはどのような方法があるのか
銀行借入
社債発行
株式発行
調達方法別のメリット・デメリット
03 なぜ資金調達手段の選別が重要なのか
加重平均資本コスト(WACC)の考え方
借入金と株式のバランスを考える
04 格付け機関の考え方
代表的な格付け機関と格付けのプロセス
05 資金調達のシミュレーション
社債で調達する場合
転換社債で調達する場合
株式で調達する場合
便利だが問題もはらむ転換社債
06 日本企業の大規模資金調達の事例
花王によるカネボウの化粧品事業の買収
JTによるギャラハーの買収
日本板硝子によるピルキントンの買収
ソフトバンクによるボーダフォンの買収
資金調達と株式希薄化のリスク
[コラム]海外市場での資金調達について
[コラム]目論見書作成上の注意事項
PART7
株主還元政策の考え方
~過去は考えなくてよかったが、今や経営上非常に重要な戦略に~
01 株主還元政策について:配当
株主還元政策でよくある勘違い
配当政策が株価に与える影響:配当を実施すると株価は下がる
配当は株主価値には中立的
でも、増配を発表すると株価が上がるじゃないか、という意見
配当は預金の引き出しと同じようなもの
では、なぜ投資ファンドは増配を要求するのか
預金が貯まったら定期的に引き出したい
投資家は分散投資をしたい
なぜ株式売却ではなくて、配当要求なのか
経営陣に対する不安と不信
投資に必要なお金だけを蓄積すべきという考え
保有現金分の価値が株価に反映されていない可能性
配当性向の考え方
日本企業の配当性向は欧米企業に劣る
安定配当にこだわる企業
投資家にとっては業績連動型の配当支払でよい
外国人株主の増加で求められる説明責任
Google、Yahoo!、Microsoftの事例
[コラム]配当利回りについて
02 株主還元政策について:自社株買い
自社株買いの適正レベルとは?
総還元性向でも見劣りする日本企業
[コラム]金庫株の扱いについて
配当は強制的株主還元、自社株買いは希望者に対する株主還元
[コラム]自社株買いによる敵対的買収防衛?
[コラム]自社株買いが原則禁止されていた背景:株主の資産持ち逃げに注意?
03 ケース:消費財メーカーの株主還元政策の考え方
[コラム]株主優待制度について
PART8
IRを戦略的に活用する
~まずは原則を理解し、個々の事情に応じた対応が重要~
01 IRの前提知識
2種類のIR
IRを行う理由と目的
02 IR戦略:戦略的投資家開拓の方法
さまざまな株主(種類別、地域別株主分布)
自社の事業内容、成長曲線に合った投資家を選別
投資家の株式保有状況の把握
ロードショーとエクイティストーリー
有事のIR対応:敵対的買収
有事のIR対応:委任状争奪戦
有事のIR対応:MBO
あとがき
索引
コメント
アマゾンで著者のコメント(メディアプレーヤー)付けないの?
『図解 株式市場とM&A』以来のファンの1人です。
これだけの内容とページ数で、このお値段は・・・相当安いですね。ファイナンスという翻訳本ばかりが目立つ分野にあって、信頼できる日本人の実務家が書いたというところに、非常に共感を得ます。
正直、ファイナンス分野の通常の読者層のことを考えると、値段が一桁違っても十分に売れそうです(笑)。それを考えると、ご著者の、ファイナンスを解り易く世間一般にまで広げたいという気概が、このお値段には反映されているのだと思いました。
早速、アマゾンで購入させて頂きました。勉強させて頂いてから、書評を上げるつもりです。また、遊びに来ます。
今日本屋さんで拝見しました。
高いクオリティと平易な文体、とてもよかったですよ。
グッと伝わってきました。
おめでとうございます。
お疲れ様でした。早速買いにいってきます。
>アマゾンで著者のコメント(メディアプレーヤー)付けないの?
お、それは何ですか?初めて聞きました。出版者に聞いてみますね
>『図解 株式市場とM&A』以来のファンの1人です。
おお~、そんな貴重な!もうそろそろ3年経ちますね。時間が経つのは早い…
コメントを投稿する
トラックバック
このページのトラックバックURL:
このページへのトラックバック一覧:
・実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本/保田 隆明(たなかやすはるのBLOG)
・『企業ファイナンス入門講座』 (保田隆明著)(NED-WLT)













