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2007/09/11 火
日本経済:中小企業の地位と生産性向上が鍵
社外取締役ネットワーク主催の講演会に行ってきました。スピーカーは、いちごアセットマネジメントのスコット・キャロン氏と、モルガンスタンレーのチーフエコノミストのロバート・フェルドマン氏。
いちごはご存知の通り、東京鋼鐵と大阪製鐵の経営統合の統合比率に反対して、株主総会の委任状争奪戦で勝った、あのいちごです。ロバート氏は、テレビ東京のワールドビジネスサテライトに登場するあの人です。先週も欧州のエコノミストがスピーカーとなる経済産業省関連のセミナーに出席し、英語を数時間聞き続けて疲れたので、今回も覚悟して行ったのですが、二人とも流暢な日本語でスピーチされました。スコット氏は、知らなかったのですが、日本の永住権も取得しており、大の日本好きのようです。スピーチからもそれは十分に伝わってきました。
■いちご
さて、まずいちごですが、昨年設立した投資顧問会社であり、「モノを聞く」株主を標榜している、とのこと。「経営陣に対する尊敬の念がない株式投資はけしからん」と言っていました。「経営陣の方が株主より何万倍も経営に対しての理解を有している。したがって、まずはモノを聞く姿勢が重要だ。そういうことでいちごアセットを設立した」とのこと。
東京鋼鐵、大阪製鋼の経営統合に関しては、シナジーが大きく、統合そのものには賛成していたが、「統合比率の発表と同時に、東京鋼鐵が34%の業績アップを発表。それが織り込まれてから統合比率を決めるべきだという考え。大阪製鐵から見ると、プレミアム160%乗せ(株価2.6倍)でトントンだった。しかし、プレミアムゼロだったので、プレミアム30%でどうかと代替案を出した」とのこと。
結局受け入れられずに、統合反対ということになったとのこと。結果として、いちごの倍の票が個人から反対票として集まり、経営統合案は否決されます。
スコット氏は、「個人株主がいちごに説得されたというのは、とんでもない。それは個人株主をバカにしている。そもそも東京鋼鐵の株式に投資をしていた時点で、個人株主はファンダメンタルズを分析して株式投資をしていた」と言っていました。そして、「個人株主が株主としてしっかりしていることを再認識」したそうです。東京鋼鐵では、個人投資家の多くが高齢者であり、退職金をもとに真剣に投資をしていた人が多かったとのこと。
東京鋼鐵に関しては「工場一つ、従業員100人でこれほど立派な会社を作りうるかと感動した」と言い、株は現在25%まで買い増し、今後静かに見守る予定だそうです。それは、東京鋼鐵が素晴らしい会社なので、特に注文をつける必要だないからとのことです。どこかでExit(売却)しないといけないでしょうが、Exitばかりを気にする投資家から資金を集めているとそうなってしまうが、中長期でリターンを考える投資家からお金を集めて運用する場合は、目先のExitを気にする必要ないと言っていました。
いちごの現時点での投資方針は、小型株オンリー。規模の小さい上場会社のインフラ整備をもっと整えるべきだという考え。インフラ不足により過小評価されているとのことです。また、今回の東京鋼鐵の案件から思ったことは、機関投資家による個人投資家の代弁の役割は重要であり、インターネットを通じた情報発信が可能となったことがそれに大きく寄与しているとのことです。
■ロバート・フェルドマン氏
氏のお話は一度じっくり聞いてみたいと思っていました。今の日本にとって何が必要ですか?と。彼は早速冒頭にその答えを話し始めました。ずばり、生産性の向上が必要だ、と。高齢化社会を迎えるに当たり、労働参加率の低下は避けられない。一人当たり生産高(生活水準)を維持するには生産性の向上がマストで必要。生産性の向上にはガバナンスが必要とのこと。
ガバナンス強化の方法には二つある。
1、メッセージを伝えるやり方(ダメな場合は文句を言う、いい場合は褒める。いわゆるアクティビスト)
2、ウォール街ルール(嫌なら売ればいい。ポートフォリオマネジメントを主とする立場の投資家にとってはコミュニケーションをする時間はもったいない)
どちらがいい、という議論ではなく、バランスの問題である、とのこと。
そして、現在の日本経済に関しては彼の唱えるCRICサイクルで説明されました。これは、危機、反応、改革、怠慢のサイクルだそうですが、日本は小泉時代の改善、改革に満足し、今は怠慢の時期にいるそうです。そして、目先の景気は好調ですが、政治の混迷により今やるべき改革が止まっていることにより2008年後半~2010年あたりの成長がストップする可能性がある、とのこと。
日本については、「かつては、こんなすごい技術の新商品を作りました(20~30年前)。今では海外でもそれは普通になっている。かつてはドラえもんだった日本が、のび太君化している。のび太君と付き合いたいと思う海外の国は少ないだろう」とのこと。
氏の話は納得&同意なものばかりでした。では、生産性の向上には具体的にどんなアクションが必要か、という点が最も興味あったのですが、新たな急進派政党の結成や企業の更なるガバナンスが必要という点は触れられましたが、産業構造をどうして行くべきかという点が触れられず残念でした。
21世紀の日本にとって必要な産業構造改革はどのようなものであり、どうすればそれが実現できるのだろう、これがここ数年来ずっと考えてきているのですが、いまだ答えが見つからない私にとって大きな命題です。
コメント
>いちごの現時点での投資方針は、小型株オンリー。規模の小さい上場会社のインフラ整備をもっと整えるべきだという考え。インフラ不足により過小評価されているとのこと~
うー。あまり株式投資に詳しくないので恐縮ですが、「規模の小さい上場会社の゛インフラ整備゛」の「インフラ整備」って具体的には何を指しているのでしょう??
いちごアセットの投資方針はなるほどな~と思うのですけれど、東京鋼鐵、大阪製鋼の経営統合そのものには賛成していたのに、いちご+個人投資家連合の反対により、統合そのものも流れてしまったことについては、スコット・キャロン氏はどうお考えなのでしょうね…?(何か関連発言はありましたか?)以前ちょうさんがご指摘のように、いちごに与した個人投資家さんだって統合比率が気に食わなかったわけで、統合には反対してはいなかったでしょうし。。統合が実現しなくてもいちごはそれ自体リスクとは判断していなかったのでしょうかね・・?
>「インフラ整備」って具体的には何を指しているのでしょう??
これは私もなんだろう、って思っていたものです。
>いちご+個人投資家連合の反対により、統合そのものも流れてしまったことについては、スコット・キャロン氏はどうお考えなのでしょうね…?
プレミアムゼロで経営統合するぐらいなら、経営統合がお流れになってまたの機会を待つってことじゃないですかね?具体的な発言はありませんでしたが。
>統合が実現しなくてもいちごはそれ自体リスクとは判断していなかったのでしょうかね・・?
もしそれであれば、その後株式を買い増さなかったと思います。結構、今までにないタイプの投資家ですね。おそらく。
昨日は、RTCカンファレンスで貴重なお話ありがとうございました。
ブログをベースにいろんな転がり方があるんだなぁと感心しました。
懇親会もとても楽しかったです。
ネットをベースにしらリアルでの広がりを体験できる場になりました。
これからも、是非、福岡でもカンファレンスをまた行ってくださいね。期待しています。
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