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2007/03/14 水

東証、日興コーデ:粉飾決算のススメ

事前の報道に反して日興コーデは上場維持になりました。東証が許容される粉飾の範囲を示したことは画期的ですね…

先例との対比での上場維持の理由は、

-カネボウは、粉飾しなければ経営破たんしていた(日興コーデは粉飾がなくとも経営破たんはしなかっただろう)
-西武は、粉飾をあまりに長期間やりすぎた(日興コーデはあくまで単年でのお話)

だそうです。で、ライブドアとの対比に関してはあまりどこも報じていませんが、私が思うライブドアとの違いは、日興コーデはライブドアよりも粉飾金額は大きいのですが、ライブドアの場合は彼らの行為が偽札を刷った行為に等しかったわけです。ライブドアは粉飾によって、株高を演出し、株高の株式を用いて株式交換により次々といろんな企業を買収し、自社の規模を拡大していった。つまり、粉飾がなければ他社買収ができなかったわけで、偽札を刷る行為と同じということになってしまいます。

日興コーデは、別にそういう偽札を刷るのと同様の行為までは行っていなかったというのが東証の判断かと(ただ、日興コーデは粉飾した決算発表後に資金調達をしているので、一部は偽札を刷る行為に似た行為はしたと個人的には思っていますが…)。

まあ、以上の観点からすると、日興コーデはそれほど重大な悪事ではなかった、ということになるのでしょう。1つの価値判断なので、それはそれでありかとも思います。

ただ、それは、今回の判断を是とすることにはつながりません。是か非かは、別途協議される必要があると思います。

まず、大前提として、株式市場は日々進歩しています。ライブドアや村上ファンドなどの急進派が登場したことにより、TOBに関するルールも変わりましたし、金融商品取引法も制定されたりしました。つまり、株式市場はより投資家が安心して投資ができるように、そしてより透明性が高まるように日々いろんなことが改善され、法律も改定されていっています。

よって、今の日本の株式市場は、ライブドア事件、カネボウ、西武の上場廃止などが起こったころに比べると一歩も二歩も進歩している「はず」です。よって、以前の日本の株式市場で起こったことと照らし合わせて、今の日本の株式市場で起こったことを比較して、以前に比べて悪質性が低いから上場を廃止しなくても良い、という議論は、株式市場が発展しているのであれば、成り立ってはいけないかもしれません。

逆に言えば、いつまでも過去の事例との対比で物事を決めるのは、株式市場が発展していないことでもあります。そして、今後もそういうスタンスが続くのであれば、今回の東証の決定は、上場企業に対して、

「粉飾?うんうん、全然ありよ。ゴメンちゃいと言って謝ってくれて、粉飾金額が数百億円、しかも単年限りのもので、そして、操作に協力的であり、反省している態度を見せ、修正した有価証券報告書を出してそれに対して監査法人の意見書をつけてもらい、組織ぐるみの犯行ではないと主張し、前経営陣に対して損害賠償を請求すればセーフにしてあげる」

というメッセージを送ったことになります。上場廃止にしていれば粉飾は絶対にダメだという強いメッセージを送ることになったでしょうが、今回の件で、東証は気づいているのかどうか分かりませんが、結果として、粉飾しても許される、上場継続できる基準を明確に示しました。一種の粉飾のススメかもしれませんね。日本では新興市場は粉飾のオンパレードで存在価値自体が問われていると思いきや、本家本元の東証も粉飾の許容範囲を示してしまうようでは、日本の株式市場ってどうなるのだろうと思ったり…

今回の上場維持、投資家保護の観点から良かったという声も聞こえますが、投資家は保護しなくともシティがTOBをかけると表明していたわけですので、みんな最低でも一株1,350円で買い取ってもらうことができたわけです。今回の一連の日興コーデの報道がなされる前も、日興コーデの株価は1,500円以下で推移していましたので、1,350円で買い取ってもらえるのであれば、十分に投資家保護ではないかと思います。

それよりも、まったく投資家保護の手段が取られず株価が激減したライブドア株、そして、最後の最後まで株式を保有していたら、不当に安い価格で株式を強制売却させられたカネボウ株主、そんな人達に対する保護のなさに比べると、今回の日興コーデの株主は、相当に恵まれて保護されていましたので、それに加えてわざわざ東証が保護をしてあげる必要性があったのか、過去の保護されていなかった案件に比べても非常にギモンであります。

ライブドア、村上ファンドなどグレーなモノに対しては厳しく取り締まります、断じて許しません、という態度を見せていた地検、証券取引等監視委員会でしたが、今回の件は地検でもSECでもなく東証の判断とはいえ、「これぐらいの粉飾ならアリよ」と見せちゃったことは、いつか将来において、その代償を支払う日が来るのではないかと思います…。代償を支払うのは東証ではなく、投資家なんですけどね…。「それでもまだ株式投資やりますか?」、そんなメッセージを受け取ったのは私だけでしょうか?

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コメント

初めてコメントさせていただきます。自分はアメリカの四大監査法人で働いていますが、確かに東証の日興に対する処分は甘すぎなような気がしますね。
ただ、保田さんもおっしゃられているように、株主保護の観点で言うならば、上場維持の決定でシティーのTOBの価格が初めの1350円から1700円まで上がっているらしいので、東証の決定も一理あるのでしょうね。また、日興は東証の株主の一社でもあるので、そのあたりの関係も今回の決定に影響したのでしょうか?

Posted by: Ken : at 2007年03月14日 04:51

経営者と株主を混同した、変な議論ですね。
経営者が粉飾したなら、経営者に制裁を加えれば良いと思いますが、上場廃止は経営者に対する制裁になりますか?上場廃止の不利益は、もっぱら株主が被るものであって、経営者は何の不利益も被らないのと違いますか?
アメリカがSOXを制定したように、あくまで経営者の責任を追及することにより粉飾を防ぐべきであって、上場廃止なんて経営者の腹は痛まないのだから、粉飾防止に何の役にも立たないと思いますよ。

Posted by: 変な議論ですね : at 2007年03月14日 18:32

>経営者と株主を混同した、変な議論ですね。

そうなんです。変な議論です。分かってはいるのですが、ただ、では、どうする?となる時に、適当な答えがないのですよね。最終的には内部統制、コーポレートガバナンスの問題に帰着するのでしょうが、それが浸透するのを待っていると時間がかかりますしね。社外役員もお飾りの会社が多い現状では、内部統制やらコーポレートガバナンスやらと言ってみたところで空しい感じもします。

経営者への懲罰をすっごい重くすることにより、一種の恐怖政治的に粉飾をなくすというのはアリナシ論では、アリなのかもしれませんが、サラリーマン経営者、しかも、役員報酬もそれほどには高くない日本においては、あまり現実的でないよなと。もちろん受け取る報酬額の何倍までとかの制裁金額の上限金額をつけるなどはありかと思いますが。それはきっと監査法人に対しても同様だと思います。

しかし、一方で、そもそも、業績連動型の報酬は一部導入されているものの、まだ大枠では日本企業経営陣の報酬はそれほどドラスティックに業績連動型ではないので、通常であれば、粉飾をすることによる直接的なメリットは経営者個々人が得るわけではないはず…。ゆえに経営者は粉飾をするインセンティブがないはず。ので、経営者に対する制裁を高めようが高めることがなかろうが、粉飾の発生度合いにはあまり関係ないはず。オーナー経営者であれば、自分の持株の価値を無理やり高めたいとかはあるでしょうが。

株主からのプレッシャーがきつくて、つい粉飾してしまうという意見もあるかもしれませんが、それはやっぱりどこかおかしな議論でもあるよなと。

本来は上場廃止という制度そのものがどうなの?という点から解決していかないといけないのですが、上場廃止という制度を設けてしまっている現状、そして、上場企業に相応しくない企業は上場廃止にするという決まりがある現状では、その制度に従って対応していかないといけないわけで。でないと、市場のルールというのはなんなのだというところに関しての混乱があるかなと。

どうして最初から上場廃止の可能性をプンプンに匂わせてしまったのだろう、というギモンも大きく存在します。

Posted by: ちょう : at 2007年03月15日 00:15

法的見解を求める場面で過去の判例がスタンダードになっているように、日本の株式市場におけるスキャンダルに対するペナルティとしては、西武鉄道やカネボウが上場廃止とした事例がスタンダードになっているわけです。そうした過去の事例と照らし合わせると、やはり日興CGは上場廃止しかあり得ないということになります。これは間違いありません。日興CGがセーフとなれば、粉飾とは何の関係もない株主名簿のウソというだけで上場廃止に追い込まれた西武鉄道のケースは説明不可能となってしまいます。株主名簿のウソなんてものは、ただでさえ理論的な株価には何らの影響も与えないのですから・・・。ちょうさんのエントリはそういう趣旨です。もっとも、そもそも上場企業の〔スキャンダル→上場廃止〕というペナルティの図式そのものには???という面は否めませんよね。

Posted by: ST : at 2007年03月15日 01:26

>日興CGがセーフとなれば、粉飾とは何の関係もない株主名簿のウソというだけで上場廃止に追い込まれた西武鉄道のケースは説明不可能となってしまいます。

という上記コメントについて

西武鉄道株は、コクドを含む上位10名等の持株数が東証の少数特定者持株数に係る上場廃止基準等に抵触するため、本来上場を維持することができな
かったにもかかわらず、組織ぐるみの虚偽記載等の不法行為により、極めて長期間にわたって上場され続け、結果として投資家に損害を生じさせたものです。すなわち、株主を偽らなければとっくの昔に上場廃止になっていたケースです。

Posted by: Min : at 2007年03月16日 23:14

株主保護やスキャンダルは個別の話で、東証がルールに従ってきちんと判定しているのか、ということが主題じゃないですかね。審判が特定のプレイヤーに手心を加えている(実際に加えたかどうかは分かりませんが)状況で、ゲームに参加したいと考える人がいるのだろうか、と。
個人的には上場企業が遵守すべき約束事を(組織的でなかろうが)破った時点で上場廃止が適当だと考えます。それによって株主が不利益を蒙るならば、株主が企業に対して訴追を行うべきじゃないですかね。
株主保護を理由にしてしまったら上場廃止なんてそもそも不可能ですよね。保護するかしないかの線引きはどこでするんでしょうか?

Posted by: mapi : at 2007年03月17日 13:01

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日興株上場維持、各者の反応(404 Blog Not Found)

日興上場維持に対する関係者の意見(VC一夜漬blog)

東証は上場廃止してはどうか(微熱日記 別館)

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