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2007/02/16 金

サッポロビールは当面、無策を貫くべき

FPNニュースコミュニティでも同じものをアップしましたが、一応自分のブログでもアップしておきます。別のものの執筆をしていた後に書いたので、いつもと違ってなぜか断定口調になっていますが…


スティールパートナーズがサッポロビールへのTOBを実施すると表明。スティールと言えば明星食品へのTOBを仕掛け、日清食品から対抗TOBを引き出し、保有していた明星食品株をマンマと高値で売り抜けたことが記憶に新しいが、今回も同様の狙いと思われる。


サッポロがインテリヤクザのスティールに屈しないためには無策を貫くことがベストだと思われる。 スティールは、最終的には自社が保有するサッポロ株を売却できないことには利益を得られない。したがって、今回、万が一スティールによるサッポロのTOBが成立して株式を3分の2以上保有したとしても、それらは最終的には売却せざるを得ない。売却方法としては他社への売却、つまり、サッポロをどこかに売り飛ばすことでしか利益を上げることはできない。


サッポロの保有する恵比寿ガーデンプレイスの不動産価値だけでも結構な金額になるので、不動産事業とビール事業をバラ売りすれば、スティールはサッポロの買収に多額の資金を投じてもウハウハリターンを得ることができる。もちろん事業売却は時間もかかるので、面倒ではあるし、万が一売却先が見つからなかった場合はスティールは大困りになるというリスクはあるが、それらを差っぴいてでも魅力あるリターンだろう。 一方、スティールは現在すでにサッポロ株式を20%弱保有しており、これを今、ある程度の高値で売ることができれば、それはそれで魅力的である。それは、まさにスティールが保有していた明星食品株式を日清食品に高値で買わせた様に。


M&Aの際などに、株式を大量に買い付けようとするとき、市場で株式を買いましたのでは株価がどんどんと上がっていき、買収者にとっては自らの買い付け行為が自らの首を絞めることになるし、最終的な買収金額を事前に見込めないというデメリットがある。こういう事態に対しての解決策としてTOBというものが存在する。それは、セカチューならぬ「市場の中心で株式を売ってくれと叫ぶ」行為であるが、サッポロ株主に対して「あなたの持っているそのサッポロ株を私に売ってください!」と叫ぶわけだ。
その時には株主が売りたくなるように、株価よりも高い金額で買い付けることが一般的だ。このTOB価格と株価の差額をプレミアムと呼び、平均的なTOBプレミアムは25%程度である。 スティールは前回の明星食品株式へのTOB、そして今回のサッポロへのTOBの両方において、買い付け価格が比較的低い。株価に対して10%強のプレミアムを載せただけである。これは、一般的なTOBにおける25%程度のプレミアムよりも低いプレミアムにしておき、対抗TOBが起きやすくしている。実際、明星食品の時はマンマと日清食品が乗ってきて、より高いTOB価格を提示し、スティールはマンマと保有していた株式を売り抜けた。


今回も同じ図式であろう。たかだか10%強のプレミアムでは株主はTOBには応じないと思われる。つまり、対抗TOBをかける人が登場しなければ、スティールは株を売り抜けることもできなければTOBを成功させることもできない。よって、サッポロは無策を貫き通すことがスティールへの最強の対抗策ということになる。ということで、またメディアでも大騒ぎになっている本案件であるが、サッポロは静観を保ち無策を貫き通すのがいいと思われる。


ただ、明星食品とサッポロの大きな違いは、サッポロが圧倒的に買い物対象として魅力的なことである。サッポロのビール事業は、キリン、アサヒに圧倒的な差をつけられてはいるものの、それでも、世界で有数のビール消費国である日本において3位の市場シェアを有しているのは、魅力的である。また、それよりも、サッポロの保有する不動産事業の魅力は今更言及するまでもないレベルのものだ。


よって、サッポロが無策を貫き通した結果、スティールが売ることも買うこともできない八方塞になった場合は、それこそスティールがハゲタカぶりを発揮し、12%などという甘っちょろいTOBプレミアムではなく十分に高いTOBプレミアムをつけて「本気で」サッポロ買収に再度乗り出す可能性は否定できない。そうなると最終的には


1、サッポロはホワイトナイト(日清食品のようなお助けマン)を探す


2、最近流行のMBO(自社経営陣による自社買収)をして非上場化する


3、現在の経営陣に経営を任せておいた方が、スティールが提案する高いプレミアム価格よりも株価を上げうると主張し、独立維持を図る


のどれかになってしまう。個人的には経営陣、社員全員が株主となるMBOを行い、ビール事業を不動産事業を分社化し、それぞれどこかに売却するのが、経営陣・社員の懐も潤うという意味でいいのではないかと思うが…。


それにしても、明星食品に始まったスティールの株式売却に関する揺さぶり行為、これはグリーンメーラーと同じ行為であり、今後も保有しているほかの銘柄に関してもインテリヤクザぶりを大々的に発揮していくものと思われる。では、このような行為は糾弾されるべきものかと言えば、それは上場株式は誰もが自由に売買できる限りにおいて、糾弾されるべきものではなく、それこそスティールの行為は自由である。むしろこのような行為によって、各社の株価が適正化されていき、企業経営陣が本来実行すべき企業戦略を遂行するようになるという副作用として経済界に好影響を及ぼすものと思われる。


しかし、やっている行為は立派なユスリ、タカリである。最終的にはそのような行為をしてでも利益を上げてお金持ちになりたいと思うか、そういう行為は人に誇れる行為ではないので、自分は加担しないというスタンスを取るのか、結局は個々人の価値観に委ねられることになるとは思う。そこで、この行為に対する各個人の価値観に準拠する是非は置いておいたとしても、株式市場ではこのような行為が起こるのだということは理解しておくべきなのかと思われる。


一方、スティール側にしてみるとサッポロと対話の機会を持つためにはこのような強硬手段に出ざるを得ないという事情もある。企業は株式会社である限りは、株主と対話をする義務があり、それは株主が自らの好む株主、好まない株主に限らずそのような宿命にある。その点、こうなる前に株主と対話をしてこなかったサッポロにももちろん非はある。


日本の株式市場が、ユスレば、タカレば誰でも儲けられるという低落した市場にならないためにも、
今回のサッポロの案件は他の企業にとっても他人事ではなく、重要な事例となると思われる。

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コメント

サッポロビールの件聞いてみようと思ってたところでした。業界人の立場からみると、①案しかないのかなと。結局アサヒビールが動くようなきがするけど・・・

Posted by: 村田です。 : at 2007年02月21日 23:51

やっている事は村上ファンドと同じなのに、こうも報道が好意的だと違和感がありますね。

Posted by: ポン : at 2007年02月21日 23:52

もしちょうさんがサッポロのアドバイザーだったとしたら、買収防衛策として実際どの方法をベストの方策としてアドバイスされますか?「無策が一番いいっすよ。 」といっても会社側も納得しないような気もしますし、様々なリスク要因を考慮すると(スティールに売り抜けさせるのはしゃくではありますが…)サッポロは結局「白馬の騎士」戦略を選択しそうな気がしますが。サッポロがガッツ見せて「やれるもんならやってもらおーじゃねーか。スティールさんよぅ 上等だぜっ。 」と居直れば結構無策戦法も有効かもしれませんが。

Posted by: KK : at 2007年02月21日 23:52

>もしちょうさんがサッポロのアドバイザーだったとしたら

確かに私の今回のエントリーはスティールへの毛嫌い感が前面に出ていますので、企業及び株主にとってのアドバイスという面ではちょっと違いますよね。

で、もし企業のアドバイザーであれば、どうするか、悩みますよね。原理原則としては株主価値最大化が可能な戦略をアドバイスしないといけませんので、今の状態は高値で会社を売却できうる素地が整ったことになりますので、高値で買ってくれるホワイトナイトを探しましょう、というアドバイスが1つ。

もう1つは、不動産事業を会社分割で分社化し、新不動産会社の株式を既存サッポロ株主に割り当てるということもありかなと思います。株主は不動産事業に魅力を感じているわけですので、それが分社化されて既存株主に株式が交付されるならmake senseかと。一方、スティールにしてみるとそれって実は嫌かもしれませんよね。割り当てられる新不動産会社の株式を現金化するには転売、もしくは新不動産会社のIPOが必要になりますが、どちらもすぐにできるものではないでしょうから。一種のクラウンジュエルにもなり得ると思いますが、でも、これほどの規模の適格分割型分割は日本ではまだ見たことがないなあ。。。

Posted by: ちょう : at 2007年02月21日 23:53

もうサッポロのパターンだと遅いのですが、スティール等への対応策としてこういったパターンも考えられると思うのですがどう思われますか。
1.タイミングとしては5%を超えて大量保有報告書が出た直後。
2.デッドも使って資金調達し、大規模な自社株買い(例えば配当原資発行済みの20~30%とか)を行い、最適資本負債構成に近づける。
3.ファイナンス理論的には企業価値の上昇余地は無くなり、スティールは追加投資意欲を失いExitする。

基本的には以上です。
スティールの対象先の一つのパターンとして、キャッシュフローが安定、無借金会社、配当原資が潤沢、比較的小規模な会社が多いという特徴があると思いますが、配当を吐き出させることを前提にIRRを計算していますよね。(exユシロ)
すなわち、配当余力、株価上昇余力がなければおのずとEXITするはずとの前提に立っています。
で、自社株買いですが、市場からこれだけ大規模に調達すれば、需給がタイトになるため、(スティールが)買い進めることが難しくなるし、自社株買いは社外流出としても、(配当単価を調整することで)翌年度以降の配当流出を押さえることができる。
また、スティールの持株比率が低いタイミングであれば、自社株買いによるスティールの持株比率上昇もさほどではなく、既存の安定株主比率も高めることができる。
また、規模からして社債調達をしていないので、外部格付を気にする必要もない。
ということで、自社主導でのRecapが最も有効と考えました。
ただ見てるとそういった手法をとっている会社が1社も無いのが不思議です。
(アドバイザーである)証券会社のビジネスにならないからかなと思っていますがいかがでしょうか。それともなにか無理があるのでしょうか。

Posted by: tour-de-corse : at 2007年02月21日 23:54

tour-de-corseさん

コメントありがとうございます。

面白いアイデアですよね。上昇余地が限られるという意味では追加での投資意欲減退という効果はあるのだと思いますが、でも、5%超を保有したスティールにとっては自分たちの持分の価値も高まって悪いディールではないですよね。

Recapは資本コストの最適化の観点からも多くの企業でアリな策なんだと思いますが、企業側からのウケが必ずしも良くないのが難点ですね。資本コストが下がる、企業価値が上がると言ってみたところで、そんなことよりもどうしてわざわざ借入金を増やす必要があるのさというところで受け入れられないんですよね。まあ、確かにその気持ちは分かりますよね。

でも、MBOが1つのブームになっていますので、recapの発想自体は広まっていくと思います。

って、結局あまりお答えになっていないのですが…

Posted by: ちょう : at 2007年02月25日 00:54

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